康綺堂の本読み備忘録

読んだ本の感想や探偵小説の考察等のブログです。

読後放心の理由

「読後に放心したミステリー」についてのタグがTwitterにてお題に上がった。
読後感動感心感激した本は数多くあれど、
「放心」となると、これまた格別の一冊、となる。
探偵小説にハマるキッカケになった横溝正史の『八つ墓村』は殿堂入りとして、今回順不同ながらベスト3を出した。ここでは個人的解説もつけてみた。
ご興味のある方、ぜひ作品もお楽しみいただけますよう……!

横溝正史『夜歩く』
初読当時は中学生、3年の梅雨時だったはず。
全編を覆う、露悪的な雰囲気に毒舌と怨嗟の応酬に圧倒されながらの真相とは……。
無論、その当時、原型となったと思われる類似のトリックを扱った某問題作も、その元祖的古典ミステリも読んでいなかったが、それだけに、「あの」結末は衝撃的だった。金田一さんがいなかったらどうなっていたことか。その後敬遠していたが、成人してから再読、成る程傑作だと再認識した次第。

・エラリイ・クイーン『フォックス家の殺人』
ハヤカワなので「エラリイ」表記で。
「過去に起きた事件の再調査」「もし真犯人が別にいるならそれは誰?」年月が経ち、証拠も証言も覚束無いうえに、調査にも邪魔が入るなかエラリイが下した結論とは。謎解きのプロセスと閉塞感の描写がまた。解決した後のエピローグで「おいやめろ」と叫んだのは、この作品がはじめて。

泡坂妻夫『しあわせの書』
2012年版『東西ミステリーベスト100』にランクインしていたので気になっていた。やられた。所所の伏線と「なぜ」への解決、「奇跡」の正体。見事の連続のうえに、なんといっても……いや、これは実際に本を手に取ってからのお楽しみ。この一冊での放心以来、本格的に泡坂妻夫にハマることとなった。


以上、長々と書いてしまった。今後も新しい一冊を読み終わる度に感動感心感激し、放心するだろう。その時、このベストはどう変わるか。これまた先のお楽しみ。