康綺堂の本読み備忘録

読んだ本の感想や探偵小説の考察等のブログです。

2021-01-01から1年間の記事一覧

私の2021年

2021年、この1年はゆるやかに始まり、慌ただしく過ぎていった……という印象である。 「予想外」というのも、個人的にこの1年を表す言葉だと思う。 同人誌を刊行したこと。原稿作成から製本発注、通販まで自分でやり遂げるとは思わなかった。しかも、自分が…

一柳三郎の本棚

※※※横溝正史『本陣殺人事件』について若干のネタバレがあります※※※ 横溝正史『本陣殺人事件』において謎解きの重要なカギとなるのが、探偵小説マニアである一柳三郎の本棚の存在である。彼の本棚は金田一耕助が驚嘆するほどの品揃えであり、地の文でも「探偵…

原稿と感慨 ー横溝正史のジュヴナイル作品

柏書房の『横溝正史少年小説コレクション』は、この記事を書いている段階で5冊目『白蠟仮面』が刊行されたばかりである。 横溝正史のジュヴナイル作品といえば、私は角川文庫版で楽しんだものだが、今回改めて、初出・初刊ベースの文章で読み直していると、…

偏愛横溝短編の話

先月から、Twitterのスペース機能を利用した風々子さん主催のオンラインイベント『偏愛横溝短編を語ろう』にゲストスピーカーとして参加している。 このイベントはタイトルにもあるように、自分が愛してやまない……すなわち「偏愛」の横溝正史作品について語…

8月の活動報告

今月は活動報告を バタバタとあっという間、暑い日と土砂降り続きの日のギャップが激しく、この記事を書いている今も「8月、夏もそろそろ終わり」ということにイマイチ、ピンときていない。 今月は風々子さん主催、Twitterのスペース機能を利用したオンライ…

個人的『蝶々殺人事件』メモ

※※※横溝正史『蝶々殺人事件』『本陣殺人事件』クロフツ『樽』ドゥーゼ『スミルノ博士の日記』についてネタバレがあります※※※ 横溝正史『蝶々殺人事件』を再読したので少し。 ○作品の印象 作品そのものの印象は、スバリ「華やか」である。歌劇――オペラ……芸能…

本の進捗

このブログもなんだかんだで3年目。 相変わらずの月イチ更新ですが、 今後ともよろしくお願い致します。 さて、現在このブログに掲載した横溝正史と夢野久作関係の記事を加筆修正ないし改稿したものを1冊にまとめるべくヒイヒイ言いながら編集中である。休…

金田一耕助の復員ルート

横溝正史の金田一耕助シリーズは、特に初期の作品は戦後間もない時期に発表されている為か戦地から帰還……復員が事件に深く関わっているものが多い。 名探偵・金田一耕助も復員兵としての経歴を持つが、そのことについて触れている描写は意外と少ない。私が把…

個人的『壺中美人』メモ

※※※横溝正史『壺中美人』「壺の中の女」についてネタバレしています※※※ 横溝オンライン読書会、今回は『壺中美人』がテーマである。本作の個人的な感想を、覚書程度に。 「壺中美人」こと楊華嬢の正体とその末路が印象的だったが、今回改めて読み返すと、自…

「押絵の奇蹟」から横溝作品へ

※※※夢野久作「押絵の奇蹟」横溝正史「面影双紙」「蠟人」の重要な部分に触れています※※※ 以前、夢野久作「押絵の奇蹟」と横溝正史「孔雀屏風」『八つ墓村』の共通点、影響の具合について考察を試みたことがあったが、その後、他の人に教えていただいたり、再…

悩ましき二大長編について

※※※横溝正史『八つ墓村』夢野久作『ドグラ・マグラ』のネタバレがあります※※※ 数年前から、どう挑んだものか、どう形にしたものかと悩みに悩んでいたテーマがある。 「横溝正史『八つ墓村』と夢野久作『ドグラ・マグラ』について」だ。 正直、自分自身の中で…

チョコっと小話

去る2月14日はバレンタインデー、バレンタインデーといえばチョコレートである。 チョコっとした小話を少し。 チョコレートを口に含んでウイスキーをちびちびやるのがこの時期の個人的な楽しみなのだが、このやり方をどこで知ったかといえば、江戸川乱歩の…

個人的『びっくり箱殺人事件』メモ

※※※横溝正史『びっくり箱殺人事件』ディクスン・カー『盲目の理髪師』クレイグ・ライス『素晴らしき犯罪』のネタバレがあります※※※ 去る1月23日に開催されたオンライン読書会に合わせて横溝正史『びっくり箱殺人事件』を再読した。初読は確か中学3年、15…