康綺堂の本読み備忘録

読んだ本の感想や探偵小説の考察等のブログです。

千金レポート2019 講演会編

熱気を帯びた千金の翌日24日(日)は
午後から倉敷市立美術館にて講演会が
開催された。

講師はおなじみ網本善光さんと浜田知明先生。
網本さんは『八つ墓村』を中心に、横溝正史にとっての「岡山」について講演。

・「岡山」と「」(カギカッコ)つきなのは
「横溝作品における岡山は加藤一さんから聞いた岡山の風景・風習等をベースに横溝正史が作り出したもの」という考えから。
・『八つ墓村』にしろ『獄門島』にしろ、舞台が県境にある場合が多く、そこ(現場)へゆく過程は描かれてもある地点からはまるで現実と非現実のスイッチが切り替わるように判然としなくなる……
民俗学でいう「マレビト」の立場にあるのは、名探偵・金田一耕助。内(村や家)の災い(事件)を外から来た彼(探偵)が解決する

という指摘には目からウロコ、いや、感激のあまり鳥肌がたった。そうか、そうだったのか……と。

浜田先生は初出誌や初刊本、関係図書に掲載された「図版」について講演。
初出誌に掲載された「見取図」等の変遷とそれに伴う本文の改訂などについて。
「黒猫亭」見取図に後年付けられた「ある箇所」の謎、角川文庫版とは異なる「幽霊座」『呪いの塔』の見取図、「蠟の首」のある単語の真の「ルビ」はなにか……と興味深く奥の深い世界を垣間見た。


こうして、千金2019の全ての日程が無事終了、前日に比べ少し冷える秋の夕暮れの下、長崎を目指して帰路につくのであった。






ちなみに、午前中時間があったので北長瀬にある「万歩書店」本店に立ち寄ったのだが、そこで浜田先生とバッタリ、「お互い、考えることは同じですねぇ」と苦笑いしあったのはここだけの話。