康綺堂の本読み備忘録

読んだ本の感想や探偵小説の考察等のブログです。

思い出のエラリー

現在私は時間を見つけて某会の会報用アンケートを少しずつ書いているのだが、ふと、エラリー・クイーンの名前を最初に知ったのはいつごろだったっけと思った。

今回はちょっと思い出に浸ってみたいと思う。

 

エラリー・クイーン(に限らずディクスン・カー等の海外作家)の名を初めて知ったのはやはり横溝正史の小説とエッセイがキッカケだったので大体14~15歳、中学時代である。更に中3の春頃、文春文庫版『東西ミステリーベスト100』(旧版の方)を地元の古書店で購入し愛読したことも加わる。海外作品のベストワンが『Yの悲劇』、他にも『Xの悲劇』『ギリシャ棺の謎(秘密)』『災厄の町』もランクインしていたと思う。ここで「エラリー・クイーンという作家はこういう作品を書いていて評価されている」というある程度の知識を得たのであった。

 

初めてクイーン作品に触れたのは高校時代だ。

私が通っていた高校の図書室には創元推理文庫のいわゆる「おじさんマーク」が背表紙についた版のエラリー・クイーン作品がズラリと並んでいた。少なくとも「悲劇(レーン)四部作」「国名シリーズ」「冒険」「新冒険」はあったと思う。

「アッ!エラリー・クイーンだ!」

名前だけは知っていた作家の作品、予備知識的なものはほとんど持っていないが、読んでみたかった作家の作品……。

当然、16歳になったばかりの私は喜び勇んで挑戦するのだが…………挫折した。ハッキリ言って、その当時の私の読解力では難解・高尚すぎたのである。ここで苦手意識がついてしまう。「読まなきゃな」と思いつつも手を出せずに三年間を過ごした。苦い挫折感が残った。

 

では「実際に作品を初めて読了したのはいつか」というと、高校を卒業して進学した19歳の春頃だったと記憶している。読んだのは『ローマ帽子の謎』(創元推理文庫版)だった。この段階ではまだあまりピンと来ていない。

エラリー・クイーン、面白いな」と思ったのは『Xの悲劇』と『Yの悲劇』を読んでからで、決定的だったのは社会人になってから読んだ北村薫『ニッポン硬貨の謎』だ。どういう経緯でこの作品を読もうと思ったのか記憶は定かではない。ただ、この作品を読むにあたって『シャム双子の謎』を読み、改めて『ニッポン硬貨の謎』を読み終えると「エラリー・クイーンて今まで敬遠していたけど、すごく面白いんじゃないのか」と思うようになった。

 

それから『災厄の町』を読んだ。『フランス白粉の謎』からスタートして国名シリーズを読んだ。そして『エラリー・クイーンの新冒険』の「神の燈」を読んだ。『靴に棲む老婆』を読んだ。少し経ってから『フォックス家の殺人』と『十日間の不思議』を読んだ。

…………不可解な事件と謎の提示、魅力的な登場人物たち、論理的な推理、鮮やかな解決…………

……気がつけば、全作品、というわけではないがあれやこれやとクイーン作品を読んでいた。高校時代、あれほど敬遠していたのが今では大好きな作家の一人(フレデリック・ダネイとマンフレッド・リーのコンビなので厳密には二人)だ。

そして現在に至る。

 

今、再び『ローマ帽子の謎』を読んだ。新訳版で新鮮な気持ちで読み終えることが出来た。詳しい感想はアンケートに書くとして、ただただ面白かった。

再読と回想を終えた今、しばらくは新訳版で再読リレーを行い、まだ手をつけていない作品に触れるとしよう。