康綺堂の本読み備忘録

読んだ本の感想や探偵小説の考察等のブログです。

『魔眼の匣の殺人』サイン会と作品の感想 (ネタバレつき!)

※※今村昌宏『魔眼の匣の殺人』
アガサ・クリスティーそして誰もいなくなった
横溝正史『獄門島
のネタバレがあります。ご注意ください。※※




去る4月13日、メトロ書店本店で開催された
今村昌宏先生のサイン会に行ってきた。実を言うと人生初のサイン会参加だったりする。
案の定定刻の30分ほど前に会場に到着(いつぞやの千金当日に比べたらだいぶマシな方だと思う)心臓をバクバク言わせながら開始を待つ。
入荷していた『泡坂妻夫引退公演』「手妻篇」と「絡繰篇」を購入、少しは落ち着くかと思ったらむしろバクつきが増し、ついに先生ご本人が登壇されると、どういうわけか、すごく落ち着いたという。
うーん、緊張感て本当に不思議。
それにしても、目の前で自分の宛名つきのサインが書かれていく光景はすごく感動的だ。今村先生とは一言二言言葉を交わした程度のわずかな時間であったが、非常に充実したひとときであった。

さて、今作『魔眼の匣の殺人』は「予言」がキーワードであり、予言のビジョンを描いた絵の通りに殺人が起きる……という一種の「見立て殺人」が閉鎖空間の中で展開される。
本作の序盤(日常パート)でアガサ・クリスティー横溝正史の名が挙げられていてニヤリとしたが、作中にも存分にかの二人の探偵小説作家の作品が活かされていてさらにニヤニヤしながら項を繰ったものだ。
クリスティーについては「犠牲者が出る度に減る人形」等『そして誰もいなくなった』が相当に意識され、作中、題名やネタバレを伏せてあるにせよ結構言及されてもある。
では横溝正史はどうか。『そして誰もいなくなった』と対応する作品といえば『獄門島』である。
『獄門島』といえば「あのことば」だが、『魔眼の匣の殺人』では「あの手記」にオマージュが見いだせそうだが、あるいは真犯人の動機面に相似を見出だせる気もする。
封建的な、あまりにも封建的な閉じた世界から生じた動機、これらを出発点とする犯罪は、どちらも結局は目的を果たせないままに終わる。
そして、比留子の、いつにない攻撃的な怒りは(葉村の存在がかかっているにせよ)原作よりはドラマ版……2016年に放送され騒然となった長谷川博己版『獄門島』の金田一耕助を連想した。
(さすがに、あそこまでデスペレートではないだろうが……)


第一作『屍人荘の殺人』も凄まじかったが、今作『魔眼の匣の殺人』も面白かった。次回作への含みを存分に持たせる形で幕を閉じたわけだが、今後の展開が非常に楽しみである。

そして、第三作目のサイン会、絶対行くぞ…………!